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2020年03月19日
「プレイフル・ラーニング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、今、幼児教育や育児で、子どもが自分で学ぶ力を伸ばすのに大事な考え方とされだしてきています。
幼児期のお子さまをもつママ・パパに知っておいてもらいたいプレイフル・ラーニングの考え方をご紹介します。
プレイフル・ラーニングの「プレイフル」とは、物事に対してワクワク・ドキドキする心の状態を指す言葉です。
つまり、プレイフル・ラーニングとは、ワクワクしながら夢中になって何かをする中でまなびが得られる状態のことを言います。
プレイフル・ラーニングを提唱する同志社女子大学の上田信行先生によると、わくわくしながら夢中になって物事に取り組んでこそ、子どもたちは自分の可能性を見出したり自信を持ったりできるといいます。
「夢中になって取り組むこと」とは、子どもたちにとっては「あそび」でしょう。
子どもたちが夢中になって遊ぶ中に、新しい気づきや発見、「できた!」の自信に繋がるようなおもしろさがたくさんあるということなのです。
幼児期の遊びの大切さはさまざまなところで語られてはいますが、そもそもなぜ、幼児期には遊びが大切なのでしょうか?
お茶の水女子大学名誉教授で子どもの発達心理学が専門の内田伸子先生によると、遊びでわくわくする体験(プレイフル・ラーニング)が、子どもたちの「意欲」や「集中力」といった学び基礎力を養うのにとても大切なのだそうです。
子どもの脳がもっともいきいきと活動するのは、「やってみたい!」と思うことに夢中になって遊んでいるときで、熱中して遊ぶことによって、子どもたちなりの発見や学びが得られると言います。
子どもの頃、何かに熱中した経験は、誰しも一つや二つは記憶にあるはずです。
砂場で泥だらけになりながら、友だちと一緒に何度も失敗しながら砂の山にトンネルを作った人もいるでしょう。
あるいは、コマ回しができるようになりたくて、夢中になって何日も繰り返し遊んでいたという人もいるでしょう。
こうした、試行錯誤した体験や熱中した体験そのものが、子どもたちの「集中力」「想像力」「考える力」などの基礎になっていきます。
なぜなら、熱中して遊ぶ過程自体に、途中で途切れない集中力や、「こんな風にあそびたい!」の想像力、「こうかな?やってみよう」の考える力が不可欠だからです。
何か一つのことに熱中して遊ぶ体験が多ければ多いほど、そうした力を使う機会は必然的に増えるでしょう。
時間を忘れるくらい遊びに没頭した結果、子どもたちはいくつもの気づきを自然に得ています。
例えば、砂山のてっぺんから水を流せば、川の流れ・水の流れ方の学びにもなりますし、コマ回しの練習は、どうやったら物をうまく回転させられるのか、物が回転している時にはどういう様子なのかなどの学びの芽が含まれています。
こうした遊びの中での気づき・原体験が、小学校の各教科の学習の中で「あ、これは知っている!」と、自分の体験と結びつけて考えるきっかけにもなります。
そうすると、自分の中で身の回りのことを体系づけて学べるようになるので、小学校以上の学習で必要となる、「論理的な思考力」を育むことにも繋がっていきます。
このとき気をつけたいのが、大人が無理強いをしたり、押し付けたりしないこと。
誰かにさせられている状態だと、十分な興味・関心も持ちにくい上に、自分から進んで何かを学ぶおもしろさも半減してしまいます。
ちなみに、興味深い研究結果もあります。
「子どもの遊びの質」に関する調査(※1)では、幼稚園や保育園で先生の指示のもとみんなで同じ活動をする「一斉保育」と一人ひとりの子どもが主体的に活動をする「自由保育」では、自由保育メインで育った子どもたちの方が、語彙力が高く、小学校入学後の国語の成績も良いという結果が出ています。
好きなように遊ばせていると、大人からすると一見その時間は何も学んでいない(ただ遊んでいるだけ)ようにも見えがちですが、この結果から、友だちや先生とやりとりしたり、自ら知識や気づきを得たりすることそのものが、語彙の発達にも良い影響を与えていると考えられます。
好きな遊びに熱中する「プレイフル・ラーニング」の経験が、子どもたちの小学校での学びにも繋がっていることを示す良い例と言えるでしょう。
では、子どもたちが遊びに熱中できるために、保護者や周りの大人はどんなことができるでしょうか。
まず一つ目は、遊ぶ環境を整えてあげることです。
幼児期の子どもたちの興味は移り変わりやすく、おもちゃについてはいくつか用意して様子を見ましょう。
遊ぶ目的や遊び方、完成形が決まっているおもちゃよりも、つみきやブロックなど想像力をはたらかせて自由に遊べるおもちゃ、自分なりの工夫ができるおもちゃが好ましいです。
例えば家にあるものだと、新聞紙やダンボール、空き容器など、身のまわりには、子どもにとっては立派な遊び道具となるものがたくさんあります。
使い方が想像できるおもちゃに比べて遊びの自由度が高いので、こうした身のまわりのものがかえって子どもたちの想像力・創造力を掻き立てるおもちゃになることもあります。
前述の内田伸子先生によれば、オセロゲームも通常のあそび方だけではなく、石を積み上げたり、おはじきのように指ではじいたりするなど、子どもの遊び方をせばめないようにしてあげることが大切なのだそうです。
例えば、おままごとでも、友だちとのやりとりの中で、大人が思いもかけないようなものが見立て遊びのおもちゃになっていることはよくあります。
大人は固定概念があるので「このおもちゃはこの遊び方」と思ってしまいがちですが、安全面が確保できるのならば、ある程度自由に遊ばせてあげるのが良いでしょう。
二つ目は、子どもの心に共感する姿勢を意識して見守ることです。
内田伸子先生の分析では、保護者のしつけのスタイルによって、子どもの能力や行動が変わると言います。保護者の関わり方をトップダウンで子どもに伝える「強制型」と、子どもの考えを第一に考える「共有型」の二つに分けた時、「強制型」のしつけを受けた子どもには、保護者の指示を待ったり、保護者の顔を見ながら行動したりする傾向があるそうです。
こうした観点からも、内田伸子先生は「子どもを伸ばすには、子どもに寄り添うことが大事」と言います。子どもが困った時以外には極力口出しせず、子ども自身に考えさせるよう働きかけることが、子どもが自律的に考える力や、創造力・想像力につながっていくとしています。
子どもが遊びに熱中できる環境づくりのためにも、危険な場合やルールを大きく逸れるような場合を除いては、子どものやることに対して子どもに寄り添って「理由があるんだろう」と子どもの心に共感・寄り添い、子どもの遊びに細かく口出ししない姿勢が大切です。
三つ目に、子どもができることより少し難しいおもちゃや遊びを用意することも大切な視点です。
例えば、図形のカード。
2歳頃には一つの図形カード、例えば△で「おにぎり」「お山」のように見立て遊びを楽しみますが、3歳頃には想像力もぐんと豊かになり、二つの形を組み合わせて「おうち」や「ちょうちょ」などを作って楽しむことができるようになります。
それが十分にできるようになったら、図形の合成・分解として、二つの三角形(△)で四角(■)が作れることが分かるなど、より図形の概念として定着します。
大人もそうですが、簡単にできることにはあまりワクワクしませんね。
ワクワク感を持ってあそびに取り組めるためにも、今のお子さまができることよりも少し難しいあそびに挑戦させてみるのも大切です。
その「できた!」の積み重ねが、お子さまの自己肯定感にも繋がります。
参考文献